近隣住民への工事前の挨拶は、トラブルを未然に防ぎ、円滑な工事の進行を促すために不可欠です。この記事では、近隣挨拶のポイントや注意事項、挨拶文の例などを紹介し、工事関係者や施主が近隣住民との良好な関係を築くための方法をご紹介します。これらの情報を参考に、工事に関わるすべての人々が、より安全で円滑な工事が実現できることを願っています。
近隣挨拶の目的
まずは近隣挨拶の目的について解説します。
建設業の施工においては、どうしても大きな音が出てしまうことがあります。例えばくい打ち作業、破砕作業、掘削作業、解体作業など、大きな音を伴う工事は多くあります。近隣挨拶は、こういった工事を行うことを事前に伝えておき、近隣住民からの理解を得るという目的があります。
最近はリモートワークの浸透もあり、自宅で会議に出席する人も多くいます。また、転職活動に際して、オンラインで面接を受ける方も増えています。そんな時に、外で大きな騒音が流れていたらどうでしょう。場合によっては住人の人生に影響を与えてしまう可能性もあります。
こういったトラブルを避けるためにも、近隣への挨拶は重要です。
挨拶のポイント
近隣住民への挨拶には、いくつかのポイントがあります。挨拶の際のポイントは以下になります。
挨拶をする日時や方法について、事前に住民に確認を取り、都合の良い日程や方法を提案する
挨拶をする日時を調整しておかないと、住民にきちんと説明をする事ができない可能性があります。
なお、工事によっては、挨拶の代わりに手紙を送り、何かあった際の問い合わせ用の連絡先を手紙に記載するケースもあります。そういった時は、挨拶の内容や施工の資料を同封し、何かあった際の問い合わせ先を記載しておくようにしましょう。
工事の内容や期間、工事に伴う影響などを住民にわかりやすく説明し、質問にも丁寧に答える
工事の内容や期間、工事に伴う影響を説明しておかないと、「こんな話は聞いていない」というトラブルに至る可能性があります。また、工事の内容以外にも、何時から何時まで工事を行うのか、土日も工事を行うのかなども説明しておく必要があります。
例えば休日の朝に騒音で起こされたとなると、不満を感じる方も出てくるでしょう。近隣挨拶をしても騒音自体を抑えることはできませんが、だからこそ、事前に近隣住民への周知が必要になります。
挨拶は工事1週間前を目安に伺う
工事前に近隣への挨拶をする際の適切な時期は、一般的に工事開始の1週間前とされています。これは、工事に関する情報を住民に説明するために必要な時間を確保するためです。また、住民が工事について疑問や不安を持っている場合には、その対応にも時間が必要です。かといってあまり期間を長くおいてしまうと、いざ施工となった時に住民が説明したことを忘れてしまっている可能性もありますので、施工前の挨拶は1週間前がベターでしょう。
挨拶に伺う範囲は?
挨拶に伺う範囲は、明確には決まってはいませんが、戸建住宅の場合だと一般的に両隣と向かいの3軒、裏の3軒といわれています。その一方でマンションなど集合住宅の場合は、両隣と上下の階の部屋のほか、音や振動の伝わりやすさを考慮し、斜め上下の計8部屋まで行うとよりよいでしょう。搬入・搬出を行うエレベーター前の部屋や管理人さんまで範囲に含めるとベストです。
また、地域によっては挨拶に伺う範囲が決まっていたりすることもあります。そういった場合、事前にその地域における標準的な近隣挨拶の範囲を確認した上で近隣挨拶を進めるのも一つの方法です。
施主と一緒に挨拶に行く方がいいのか?
挨拶をする際は、施主と一緒に訪問するのが望ましいです。施主は工事の依頼主であり、住民との信頼関係を築く上でも重要です。また、施主と一緒に挨拶することで、誠意が伝わり工事に対する理解や協力を得やすくなります。特に施主も近隣住民である場合、施主と他の近隣住民との関係性が悪くならないように配慮する必要もあります。そういった点からも、施主と一緒に挨拶に行く方がベターです。
粗品を持っていく
工事前に近隣住民への挨拶をする際は、挨拶文や小さな贈り物を持参すると、住民と円滑なコミュニケーションができます。挨拶文により、工事の内容や期間、住民への影響などを明確に説明することができ、小さな贈り物は、住民に対する感謝の気持ちを伝えることができます。
工事前に近隣への挨拶をする際には、様々な種類の粗品が考えられます。例えばタオルなどの日用品、洗剤などの消耗品、お菓子などが一般的ですが、簡易防災セット(例えば手袋や絆創膏、ウェットティッシュなど)などもあります。
価格帯は500円〜1000円ほどになります。価格が高すぎると相手が気を遣うこともありますので、あまり高すぎるものは避け、低価格帯のもので誠意が伝わるようなものがいいでしょう。
挨拶文の例
先述の通り、近隣挨拶と共に挨拶の手紙を送る事があります。また、近隣挨拶の代わりに挨拶の手紙を利用するケースもあります。こちらは挨拶文の例です。
1.工事概要 〇〇工事
2.工事期間 令和〇年〇月〇日~〇月〇日(予定)
※日曜・祝日は休工。但し、雨天等の関係で変更する場合があります
3.作業時間 午前○○:○○~午後○○:○○
4.工事場所 ○○様宅
5.注意事項
・工事車両及び作業員が出入りします。
・騒音が発生する場合があります。
以上
令和○○年○○月○○日
○○会社(工事担当会社)
電話 123(456)7890
担当 ○○
施主と近隣住民の関係を守ることを意識する
工事期間中には、周辺の道路や駐車場が使用できなくなることがあります。そのため、事前に住民に注意喚起をし、工事期間中の駐車場や交通手段についてアドバイスをする必要があります。また、定期的に近隣住民に状況報告をし、工事の進捗状況や問題について説明することが必要です。また、トラブルを未然に防ぐためには、工事現場の管理体制を整え、安全に配慮した工事を行うことが必要なのです。
現場での近隣住民とのコミュニケーションも意識する
施工時には近隣住民とすれ違ったりすることもあります。そういった場合、住民とのコミュニケーションが発生することも多くあります。最近は現場で施工をする職人さんもコミュニケーション能力が求められることが多くなっていますが、こういった住民とのコミュニケーションも意識しておいた方がいいでしょう。
直接のコミュニケーションを取らなくても、現場での姿を住民が見ている場合もあります。例えば休憩中にタバコを吸ってその場に捨てたり、ゴミをポイ捨てしたりしていると、近隣住民からの心象が悪いだけではなく、クレームに至る可能性もあります。クレームが発生すれば、現場で働く職人さんだけではなく所属する会社も施主にも迷惑がかかってしまう可能性があります。
こういった点からも、現場における近隣住民とのコミュニケーションを意識することは重要です。
住民からクレームが来た場合の対処方法
近隣への挨拶を行っていても、近隣住民からのクレームが発生することがあります。こういったクレームに適切に対処しなければ、工事が滞ったり、トラブルが拡大する可能性があるため、クレームが発生した際には適切な対処が必要です。以下はクレームが発生した際に心がけるポイントです。
迅速な対応を心がける
近隣からクレームが発生した場合は、何より迅速な対応が求められます。クレームの内容を確認し、原因を特定し、対処策を立てることが重要です。また、クレームに対する返答も早急に行い、近隣住民とのコミュニケーションを密にすることが大切です。
主張に対する"傾聴"
クレームに対しては傾聴が求められます。傾聴とは、ただ漫然と話を聞くのではなく、真摯な姿勢で相手の話を聞くことを指します。クレームに対処する場合、クレームが発生した場合、相手は感情的になっている事も多くあります。そういった場合、まずは相手に冷静になってもらう必要があります。そのためには、相手の主張にじっくりと耳を傾け、何に怒っているのか、何を求めているのかを理解する必要があります。また、そういった姿勢を見せることで、相手も冷静になることが多くありますので、クレームに対しては傾聴を心がけましょう。
(参考:https://denwadaikou.jp/column/blog/000752/)
継続的なコミュニケーション
クレームは一度起きると解決までに時間を要する場合があります。また、その場では解決しても、近隣住民の不満が残っている場合、またちょっとしたきっかけでクレームが再発する可能性も十分にあります。
こういった点からも、クレームが発生した場合は住民との継続的なコミュニケーションを試み、関係を良好に保ち続けられるように心がける必要があります。
説明の徹底
クレームが発生する原因は、工事に関する情報が不足している場合があります。そのため、工事の内容や進捗状況、近隣住民に説明することが必要です。事前に説明したと思っていても、説明した内容が近隣住民に伝わっていないケースもあります。伝えるべき内容を再度説明し、住民からの理解を得られるように心がけましょう。また、説明を徹底することにより、住民が施工の内容を理解しているのか、理解した上で不満を感じているのかを確認することもできます。クレームの対処においては、相手の不満がどこにあるのかを意識することがとても重要になりますので、そういった意味でも、再度、説明を徹底することが重要です。
まとめ
近隣への挨拶は、工事の円滑な進行のためにも重要です。もしもクレームに発展した場合、所属する会社や元請け、施主にも迷惑がかかってしまう可能性があります。適切な近隣挨拶を行い、近隣住民と良好な関係性を構築した上で、施工を滞りなく終えるように進めていきましょう。
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